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年次報告書を用意するのは大変な作業です。年次報告書は単なる財務報告書ではなく、自らの組織を改めて見つめ直し、企業としてのイメージを鮮明にするものです。年次報告書には、これまでの成果、今後の目標、改善すべき点や成長が見込める分野、そして財務報告が盛り込まれます。所属業界における競争力を維持するために、今年度は報告書の「デジタル化」に取り組んでみませんか。デジタル年次報告書では、マルチメディアを活用することでより魅力的なコンテンツを作り上げることができます。また、読者層に応じてコンテンツをカスタマイズできます。さらに、デジタル化は将来に向けた優れた投資でもあります。制作したデジタル年次報告書のコンテンツやデザインは、翌年の報告書、Web サイト、単発のプロジェクト用にカスタマイズした小規模なデジタル報告書、広報やプレス リリースの企画などに再利用できます。
デジタル年次報告書とは: Web ページや企業 Web サイト内の 1 セクションといった形態で公開されることがあるデジタル版の年次報告書を指します。デジタル年次報告書では、従来の印刷版の年次報告書にはないインタラクティブ性を活用して、読者がデータをダウンロードしたり、スピーチの音声を聴いたり、ハイパーリンクを用いてさまざまなセクションにアクセスしたりすることが可能になります。動画やアニメーション、図表など、さまざまなマルチメディアを活用することもできます。年次報告書をデジタル化することで、標準的な PDF ファイルや印刷された年次報告書よりも説得力が高まり、読者を惹きつけやすくなります。
年次報告書のデジタル化によるメリットを長期的に享受して ROI の向上につなげるために、以下のよくある 9 つの過ちに注意しましょう。
コンテンツの制作では、印刷版の読者ではなくデジタル版の読者を想定し、対象のオーディエンスが求めるているものを検討します。当社のチューリッヒ オフィスで言語エクセレンス マネージャーを務めるビート シュバルツは、「デジタル年次報告書で犯しやすい最大の過ちは、コンテンツに関するルールが印刷版もデジタル版も同一であると思い込むこと」だと述べています。ページ数の多い PDF ファイルや印刷された文書ではなく、Web サイトに適した形でそれぞれのコンテンツを記述して、それらをまとめる必要があります (多くの企業がライオンブリッジなどのデジタル年次報告書の専門家に依頼しています)。印刷版とデジタル版ではコンテンツに関するルールがまったく異なり、デジタル版では次のような点に注意する必要があります。
「デジタル年次報告書で犯しやすい最大の過ちは、コンテンツに関するルールが印刷版もデジタル版も同一であると思い込むことです」
- ライオンブリッジ チューリッヒ、言語エクセレンス マネージャー、ビート シュバルツ
年次報告書のデザインが魅力的で、活気が感じられる革新的なものであっても、コンテンツが読みやすくなければ意味はありません。文章のコンテンツでは、読者の興味を引く内容を分かりやすく整理して、説得力のある表現で記述する必要があります。読者が内容を理解しやすいように、用語集を用意することを検討してもよいでしょう。婉曲な表現や受動態は避け、明確で伝わりやすい文章にしましょう。
多言語の年次報告書が必要な場合は、翻訳しやすい形でコンテンツを制作します。あらかじめ将来の翻訳に備えておけば、コストを節約して納期を短縮することができます。年次報告書を制作して提供するまでの期間が短い場合は、特にこの点が重要になります。翻訳しやすいコンテンツの制作に関するヒントは、原文のコンテンツにも適用して読みやすさを向上できるため、一石二鳥と言えます。
年次報告書が PDF ファイルや印刷された文書ではなくデジタル化される場合、読者はそのデータにアクセスしやすくなることを期待します。データは簡単にダウンロードできるようにし、インタラクティブに操作できるグラフや図表を用意しましょう。また、読者が興味のないデータを非表示にして必要なデータに注目できるように、ユーザー フレンドリーな表示機能を提供します。このような機能を用意しておくと、デジタル年次報告書はさらに活用しやくすくなり、読者はより総合的に財務報告を理解できるようになります。
印刷された文書や PDF ファイルとは異なり、デジタル報告書は冒頭から末尾まで読み通されることはあまりありません。読者は自分に関係のある部分だけを選んで読みたいと考えます。顧客、ベンダーやサプライヤー、役員、投資家、従業員など、読者層に応じてコンテンツの流れをカスタマイズしておくことで、こうしたニーズに応えることができます。グループごとにカスタマイズされたコンテンツを読者が簡単に選択できるようにしておき、対象の読者層が求めるメッセージや情報をそこに盛り込みます。対象の読者層が知りたいこと、その人々に伝えたいことは何かを考えてください。コンテンツの流れをカスタマイズするだけでなく、内容をざっと見られるようにしておくことも重要です。見出しと小見出し、箇条書き、コールアウト表示などを活用しましょう。同じ情報を何度も繰り返さないでください。
場合によっては、広報担当、経理担当など、複数の部署や担当者が報告書の制作に携わると、複雑な財務関連用語や役職などの重要な用語に不一致が生じることがあります。このような失敗を避けるためには、用語集を作成して標準とする用語や役職名、その定義、表記ルールなどを定めておくと役立ちます。報告書の各セクションの制作に携わる担当者全員にこの用語集を提供します。定められた用語の一部を報告書に掲載して、読者が確認できるようにするのも効果的です (反対に公開すべきではない用語もあるでしょう)。報告書の翻訳が必要な場合、翻訳者の最終成果物の品質を向上させる上でもこの用語集が役立ちます。
「コーポレート ランゲージ」を確立している場合は、それもデジタル年次報告書に役立ちます。これは、広報や連絡など、社内外のさまざまなコミュニケーションにも役立つものです。コーポレート ランゲージを定めた資料を会社全体で共有し、日常的な使用を推奨 (または義務化) することも検討しましょう。そうしておけば年次報告書の準備の際だけでなく、年間を通じてメリットが得られます。
前述したように、複数のチームや部署が年次報告書の制作に携わる場合、文法やスタイルにばらつきが生じることがよくあります。句読点の文字や打ち方がセクションごとに異なっている場合などです。英字の語頭を大文字にしている箇所と小文字のままになっている箇所が混在することもあるでしょう。年次報告書のデザインにコーポレート カラーを使用しているセクションと、そうでないセクションが入り混じることも考えられます。このような不一致は、それぞれが間違いではなかったとしても、企業としての信頼感を低下させます。年次報告書は組織とその実績を表現するものであり、文法やスタイルなども含め、あらゆる観点から見て問題のない状態に仕上げる必要があります。
スタイル ガイドを作成し、報告書の制作に携わるすべての担当者とそれを共有することで、コンテンツの一貫性を保つことができます。制作の最終段階では、報告書全体でスタイル ガイドのルールが守られていることを 1 つのチームまたは 1 人の担当者が責任をもって確認してください。報告書の最終版では、見た目が統一されて、同じ文法規則が守られており、同じルールに則ったスタイルで文章が記述されている必要があります。
このようにスタイル ガイドを作成してレビューを行うプロセスは、翻訳においても有効です。報告書の翻訳が必要な場合は、スタイル ガイドを翻訳者と共有する必要があります。文法や綴り、見出しの書き方などで翻訳者が迷ったときには、スタイル ガイドを参照できます。これによって報告書の翻訳にかかる時間を短縮でき、翻訳プロセスのコスト削減にも役立ちます。スタイル ガイドを作成しておけば、新しい年次報告書を制作するたびに再利用できるので、その後何年もメリットが得られる優れた投資と言えます。また、作成したスタイル ガイドは、ブログや Web サイトのコンテンツ、その他の企業広報にも活用できます。
デジタル年次報告書には正確な財務報告と、誤りがなく一貫性のあるスタイルが求められることは多くの企業に理解されています。しかし、特に CEO が配信するレターなどでは、その企業を表現する明確なブランド ボイスも必要になることは忘れられがちです。さまざまな部署や担当者が報告書をレビューしていると、株主に配信するレターなどの重要なセクションで「ブランド ボイス」が失われやすくなります。しかし、このようなセクションに CEO の人柄やものの見方が表れていると、メッセージは非常に大きな説得力を持ち、記憶に残りやすくなります。
デジタル年次報告書にどれだけのマルチメディア素材を取り入れ、レターや財務報告を完璧に仕上げても、報告書に求められる基本的な要件を満たしていなければ、まったく効果は得られません。それどころか、時間と労力の無駄になる可能性すらあります。年次報告書では、次のような質問に必ず明確に答える必要があります。
これらの質問に対する回答では、もちろん企業秘密を明かす必要はありませんが、合理的な範囲で詳しく説得力のある答えを示す必要があります。このような基本的な質問に対する回答によって、株主や投資家、ベンダー、経済記者、従業員、クライアント/顧客のその組織に対する信頼感は大きく変動します。
多くの人材と労力を注いでデジタル年次報告書を作り上げたら、その効果を測定することが重要です。デジタル報告書では、ダウンロード数の追跡や、ユーザーが読んだ箇所と読み飛ばした箇所のヒートマップの作成、他の企業の年次報告書との統計情報の比較が可能です。また、従来と同じような方法でフィードバックを収集することもできます。報告書の末尾または報告書をダウンロードするランディング ページに、レビューやコメントを残せる場所を用意することができます。あるいは、フィードバックの送信先のメール アドレスを記載しておいてもよいでしょう。ある程度の期間が経過したら、その報告書の効果に関するすべてのデータを確認することが重要です。ミーティングを設定して記録を残し、次の報告書の制作に向けた改善計画を練ります。このようなフィードバックは、デジタル年次報告書やその他の報告書を制作するプロジェクトを進める上で有益な情報となります。報告書の成功と失敗について測定することで、長い年月にわたって効果が得られる可能性があります。
デジタル年次報告書の制作に関するご相談や、世界各地のオーディエンスに向けた報告書を制作するために翻訳サービスを必要とされている場合は、 当社までお問い合わせください。財務報告書の制作、翻訳、デジタル化に関する当社のサービスについて、担当者が詳しくご説明いたします。