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ディスラプション シリーズ: 遠隔医療の導入の広がり

パンデミックによって遠隔医療の導入ペースが加速

ライオンブリッジの連載記事「ディスラプション」の第 5 回。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) がもたらした危機的状況の中で医療業界に起きている変化を、当社ライフ サイエンス部門のエキスパートが解説します。

遠隔医療を実現するテクノロジーはかなり前から実用化されていましたが、遠隔医療そのものはなかなか普及せず、広がり方にも偏りがありました。 ところが、そこに COVID-19 のパンデミック (世界的大流行) が発生し、人々の暮らし方や働き方はあらゆる面から問い直されることになりました。 かつては想像もできなかったリモート ワークの急速かつ大規模な広がりが、私たちの目の前で進行しています。世界中の指導者たちの日課に Zoom 会議への参加が組み込まれ、世界的な医療機関のもっとも保守的な人々までが情報通信テクノロジーの役割を再評価するようになっています。

遠隔医療とは何か、 なぜ必要なのか

遠隔医療や遠隔健康管理の概念は、多くの人にとって相変わらず馴染みの薄いものです。これに関しては、危機的状況への対応に追われている臨床医や研究者の意識改革もさほど進んでいません。 そのような現状を受けて、世界保健機関 (WHO) は遠隔医療の広範な定義を示しました。診察や治療のみならず、研究および評価作業までを含む「個人や共同体の健康増進に資する」すべての活動を視野に入れ、情報および通信テクノロジーの用語を使って説明されています。

広範な影響力を持つこのようなビジョンが、いま私たちを取り巻く社会全体で現実化されつつあります。症状報告や対象者追跡管理といった重要な業務では、従来「疫学は足で稼ぐ仕事」と言われるほど実際に足を運ぶことが重視されていました。その領域に、政府や医療関連の公的機関がモバイル テクノロジーの導入を進めています。 また、研究者コミュニティも早急な検討の必要性を認識しています。 3 月に DIA が実施したパネル ディスカッションに参加した臨床試験専門家たちは、中国政府が武漢で実施した制限によって重要な臨床試験が多大な影響を受けたと語りました。 ある研究案件に関しては、政府から移動許可が与えられたにもかかわらず、被験者の 80% が治験実施施設に出向くことを拒んだという憂慮すべき事例が紹介されました。

遠隔医療の必要性によって起こる変化

規制当局という、リスクの抑制が組織の存在意義と言ってもいいような機関さえも、今は適応力を身に付けることの必要性を認めています。 欧州医薬品庁 (EMA) がパンデミック状況下における臨床試験のマネジメントに関して最近発表したガイダンスには、現在の課題が忌憚のない表現で述べられています。 もちろん、被験者の安全性確保は今も最優先事項であり、プロセスの変更は堅実なリスク マネジメント原則を踏まえた相応な形で行われなくてはなりません。それでも EMA は、実施状況に対する監督の継続性と、新たな要件であるソーシャル ディスタンシングおよび感染防止とを研究者が両立させなくてはならない状況下で、遠隔医療の導入を含む「異例の措置」を検討するよう求めています。

しかし、こうした変化の受容が進むにつれて、臨床試験の依頼者と管理者は新たな課題に直面することになるでしょう。 電子的な手段で被験者からの結果報告を容易化する ePRO のようなイノベーションはある程度普及してきましたが、今後は従来とはレベルが異なる、はるかに抜本的な変化が進む可能性があります。

個々の施設や管轄区域という限られた範囲内の話なら、研究者が電子的な連絡方法に移行することはさほど難しくないかもしれません。 しかし、治療法が有望と判断されて大規模な臨床試験の段階に進むと、状況が複雑化することが予想されます。 遠隔医療テクノロジーを導入することは、被験者保護に役立つ可能性や、評価作業の迅速化という重要な価値の実現につながる可能性がありますが、インフォームド コンセントなどの重要な原則の遵守が必須であることに変わりはありません。 したがって、遠隔医療テクノロジーによる治験関連業務では、電話通訳 (OPI) やビデオ リモート通訳 (VRI) のようなサービスが盛んに併用される可能性があります。

OPI および VRI とは

OPI は電話を介した通訳、VRI はビデオ リモート通訳またはバーチャル リモート通訳の略語であり、どちらも通訳サービスの提供形式を表します。これらの形式では、オンサイトや直接対面のために必要な移動にかかわる問題の多くを解消できるとともに、ネイティブ スピーカーの助けを借りて異種言語でのコミュニケーションを行うことができます。 また、お客様や話し相手のいる場所に通訳者が出向く必要がないため、感染対策の必要がないうえに互いの安全が保たれます。

言語はパーソナリゼーションのもっとも重要な要素です。 このことは、臨床試験や診療がリモート化されたからといって直ちに変わるものではありません。

この変化はこのまま定着するのか

多くの識者が指摘するとおり、今後 COVID-19 のパンデミック状況が終息したときに「新しい日常」がどうなるかを語るのは時期尚早です。 現時点で確かに言えるのは、私たちは歴史的な大転換のさなかにあり、今までと同じ体制を保ったまま次の時代を迎えられる業界など存在しないということです。 将来を見通すことの難しさも最大級ですが、おそらく、遠隔医療や遠隔健康管理の普及ペースは大幅に上がり、危機を脱した後もそのペースは持続すると思われます。 従来、ウェアラブル モニタリング装置や家庭用インタラクティブ アシスタントなどが医療分野で活躍する場は限定的と見なされていましたが、こうしたテクノロジーももはや馴染みが薄いとは言い切れません。現代の私たちは、スマート スピーカーに話しかけて天気予報をチェックしたり Netflix の番組を呼び出したりする生活をすでに送っているからです。 医療サービスのすべてがリモート化されるような事態は当面の間実現しないとしても、リモートを前提にした何らかのモデルを予見することは必ずしも非現実的ではなくなったと言えるでしょう。

この危機的状況下で御社チームの活動を支え、新しい日常への備えを始める方法について、ライオンブリッジのライフ サイエンス部門にご相談ください。ビジネスの成長を維持する取り組みを当社がお手伝いいたします。

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Mark Aiello
著者
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